この章では、Hibだけ少し特殊な「糖+タンパク質」の設計を扱う。糖だけでは弱い理由から順番に見る。
Hibの莢膜多糖は、糖の目印。乳児では糖だけだと反応が弱くなりやすい。
結合型は、「乳児の免疫が糖を覚えにくい」という弱点を補う設計。
Hibのターゲットは莢膜多糖。莢膜は細菌の外側のカプセル、多糖は糖がたくさんつながったもの。
問題は、乳児では多糖だけだとT細胞の助けを受けにくいこと。
出典: S23, S26
莢膜多糖は、B細胞には見える。でもT細胞には見えにくい。
ここが結合型ワクチンの出番。糖をタンパク質に結合させると、タンパク質部分がMHCに乗ってT細胞へ見せられる。
莢膜に対する抗体があると、免疫細胞がHibを処理しやすくなる。
ワクチンの狙いは「Hib菌を体内に入れる」ことではなく、莢膜という外側の目印に対する抗体を先に用意しておくこと。
ゴービックでは、Hibオリゴ糖-CRM197結合体が使われる。CRM197は、毒性を持たないジフテリア毒素変異タンパク質。
流れはこう。
「糖をタンパク質にくっつける」のは、乳児の免疫をうまく使うための工夫。
出典: S2, S23
Hibは、Haemophilus influenzae type b の略。
ここで大事なのは、type b が「莢膜多糖の型」を指すこと。
Hibワクチンは、Hibの莢膜という外側の目印に対する抗体を作る。インフルエンザウイルスを防ぐワクチンではない。
Hib周辺は名前が紛らわしい。
Hibワクチンは、季節性インフルエンザを防ぐワクチンではない。
Hibの莢膜多糖は、PRPと呼ばれる。
PRPは polyribosylribitol phosphate の略で、糖とリン酸が繰り返しつながった構造。
免疫から見ると、PRPは「Hibの表面にある特徴的な模様」。この模様に抗体を付けるのが狙い。
T細胞は、基本的に「タンパク質が小さく切られたペプチド」をMHCに乗せて見せられると反応する。
多糖は、タンパク質ではない。 だから、そのままだとT細胞に説明しにくい。
乳児で糖だけのワクチンが弱い理由は、このT細胞の助けを使いにくいところにある。
結合型ワクチンのうまいところは、B細胞とT細胞の見ているものをつなぐ点。
結果として、抗体の質が上がり、記憶も作りやすくなる。
CRM197は、ジフテリア毒素由来の変異タンパク質。 ただし、毒素として働く力は失われている。
Hib糖をCRM197に結合するのは、Hibを強くするためではない。乳児の免疫にHib糖を覚えさせるため。
糖だけでは弱い反応を、タンパク質の助けで「記憶に残る反応」へ寄せる。
抗PRP抗体は、Hibの莢膜にくっつく。
すると、Hibの外側に「この菌を処理して」という目印がつく。
Hibは莢膜で免疫から逃げやすい。だから莢膜への抗体が意味を持つ。
乳児は大人のミニチュアではない。
特に、多糖だけに対する反応は年齢で弱く出やすい。
だからHibでは、単なる多糖ワクチンではなく結合型が使われる。
Hib成分は、トキソイドや不活化ポリオとは性格が違う。
5種混合は「同じものを5倍」ではない。違うタイプの目印を、同じ日に免疫へ見せている。
Hibワクチンで防ごうとしているのは、Hibの侵襲性感染。
狙っていないものも明確にしておく。
「Hibを打てばインフルエンザを防げる」ではなく、「Hibという細菌の重い感染を減らす」が正確。