この章は用語集ではなく、成分表や副反応の章を読むための地図。細かい分子名より、まず順番を押さえる。
免疫は、用語から入ると混乱しやすい。先に流れを作る。
「抗原」「抗体」「IgG」を先に暗記するより、この流れに置いて読む。
5種混合を筋肉内に接種すると、体はこう動く。
ワクチンで起こしたい本丸は、病気そのものではなく、抗体と記憶の準備。
「免疫反応」は、数分の話から数週間の話まで含む。
接種直後のアナフィラキシーと、数週間かけて作る免疫記憶は、同じ「免疫」でも別の時間軸。
筋肉内に入った抗原は、注射した場所だけで話が完結しない。
腕や太ももは入口。抗体や記憶の準備は、リンパ節などで育つ。
この言い方だけでは、何が起きたのか分からない。
この切り分けができると、副反応と免疫獲得を混同しにくくなる。
まず大きく二段階で見る。
ワクチンの狙いは獲得免疫。ただし、最初に自然免疫が動くことで、抗原提示やB細胞/T細胞の反応につながる。
接種部位では、免疫細胞が集まり、抗原を拾い、炎症の合図が出る。
腫れや発熱は、免疫の入口で起きる反応として説明できる。ただし強い症状やぐったりは別に見る。
抗原は、免疫が認識する目印。病名そのものを覚えるわけではない。
免疫は、分子の形、タンパク質の断片、糖の並びなどを手がかりにする。
5種混合の成分は、免疫での扱われ方が違う。
「全部が同じように蓄積する」と考えるとズレる。成分ごとの役割を見る。
抗原提示細胞は、抗原を拾い、分解し、T細胞に見せる細胞。
注射された抗原は、ずっとそのまま筋肉にいるわけではない。拾われ、分解され、免疫細胞同士の情報に変わる。
タンパク質抗原は、小さなペプチドに分解され、MHCという台に乗ってT細胞に見せられる。
糖だけの抗原は、このMHCルートに乗りにくい。Hib結合型の意味は8章で詳しく見る。
リンパ節は、抗原情報と免疫細胞が出会う場所。
リンパ節は「免疫の会議室」と見ると分かりやすい。
獲得免疫の中心は、B細胞とT細胞の連携。
5種混合では、特に「抗体を作るためのT細胞の助け」を見る。
B細胞は、抗原に合うものが選ばれて増える。
「抗体が上がる」の裏では、B細胞が選ばれて増えている。
T細胞は、単なる司令塔ではない。B細胞の反応の質を変える。
乳児で「糖だけだと弱い」という話も、T細胞の助けを使いにくいことが背景にある。
B細胞は抗原を取り込み、タンパク質部分をMHCでT細胞に見せる。T細胞がそれを認識すると、B細胞を助ける。
この会話があると、IgGへ切り替わりやすく、記憶B細胞も残りやすい。
抗体は、抗原にくっつくタンパク質。働きは一つではない。
ジフテリア・破傷風では中和、Hibではオプソニン化と補体、ポリオでは中和がイメージしやすい。
ここではIgMとIgGだけ押さえればよい。
ワクチンでほしいのは、単に一瞬IgMが出ることではなく、IgGがしっかり上がり、記憶B細胞も残ること。
この資料ではIgMとIgGが中心。ただし、ほかの抗体名も出る。
筋肉注射の5種混合で中心に見るのはIgG。IgEは13章のアレルギーで別に扱う。
B細胞は最初、IgMを作りやすい。T細胞の助けが入ると、IgGなど別の抗体へ切り替わりやすくなる。
この切り替えをクラススイッチという。Hib結合型ワクチンの理解でも大事になる。
リンパ節などでは、B細胞が抗体の質を上げる場所ができる。これを胚中心という。
ここで起きること。
ワクチン後すぐの反応だけでなく、その後に「より使える抗体を作る細胞」が育つ。
免疫記憶は、抗体そのものだけではなく、次に速く反応する細胞も含む。
「抗体価」と「免疫記憶」は近いが、完全に同じ言葉ではない。
初回接種で免疫が抗原を覚え、追加接種で同じ抗原にもう一度出会う。
すると、
「何回も打つのが変」というより、免疫記憶を段階的に育てる設計として見る。
抗原の種類によって、T細胞の助けを使いやすいかが変わる。
「糖だけだと弱い」は、糖が危険という意味ではない。T細胞の助けを使いにくいという免疫の話。
乳児の免疫は「何もできない」わけではない。ただし、抗原の種類によって反応の出方が違う。
Hibの詳しい設計は8章で扱う。ここでは「T細胞の助けを使うための工夫」とだけ押さえる。
病気ごとに、欲しい抗体の働きが少し違う。
5種混合で狙うのは主に「抗体を作る準備」。細部は7章、8章で分けて見る。
不安を整理するには、「何をしているか」と同じくらい「何をしていないか」も大事。
「効いているか」「危ないか」は、症状だけで単純には読めない。
副反応の一部は免疫反応と関係する。ただし、免疫獲得そのものを直接見ているわけではない。
副反応は12章以降で、頻度、重さ、時間軸に分けて読む。
抗体価が高いことと、実際の発症予防は関係するが、同じ言葉ではない。
この章を読んだ後は、成分名をこう分ける。
成分表は「怖い名前の一覧」ではなく、役割ごとに読む。